日々のきろく

図書館や高等教育をめぐる様々なできごとなどを記録します

震災を記録する、記憶を担保する、ということ

がオープンしたとの記事。

 

 

震災発生からから4年4ヶ月経過したいまでも、アーカイブ活動は各地で続けられています。上記とは別件ですが、仕事ですこしだけ震災関連のデジタルアーカイブに関わったことがあったので、いまもこのへんの動向は気になっています。

これらの記事を読んでふと、「震災を記録すること」について考えたこと、見聞きしたことがふとよみがえってきたので、きろくしておきます。

いまいち纏まってませんが。。

※上記のアーカイブに対する指摘・感想などではありません。念のため。。


1.「記憶を担保する装置」

震災アーカイブとは、
被災経験や記録を次世代に引き継ぎ、活用してもらうこと。
長期保存が可能な状態として残すこと。

それに加えて、震災デジタルアーカイブはそれらを電子的に保存するだけの単なる収納庫ではなく、「失われつつある記憶を担保する装置」でもあるのではないか、それは必ずしも被災地のひとにとってだけではなくて。というのが私の考えです。

デジタルアーカイブという枠組みを作ることと併せて、そこに収録されたコンテンツのひとつひとつに隠れている、その時々の想いやことば、感情を、見る人の中に引き出す見せ方を付加することではじめて「記憶」が立体的に、「遠い場所で起こったこと」ではなくて、「自分ごと」として記録されていくのではないかなあ、と。

じゃあ、どうやって?連動企画で関連図書を展示する?うーむ、なにかが違う。。


2.「記憶を担保する」---せんだいメディアテーク2014年度展示会「記録と想起・イメージの家を歩く」から

そんなもやもやを吹き飛ばしてくれた企画展示が、昨年11月から今年1月にかけて仙台で開催されました。
せんだいメディアテーク2014年度展示会「記録と想起・イメージの家を歩く」です。
(だいぶ前の話ですが、あまりに衝撃を受けたので、いつかどこかで紹介したいと思っていたのでした。。)

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「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の記録を活用した展覧会。インターネットを基盤とした震災のアーカイブに収められた記録データを、台所や寝室など生活空間を模した空間に展示することで、記録がもつさまざまな表情を引き出します。

せんだいメディアテーク 3がつ11にちをわすれないためにセンター Webサイトより)

 

会場はひとつの家、たくさんのちいさな部屋が扉で繋がっていて。

台所やリビング、寝室という「暮らし」に直結した場所に、「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(わすれン!)が市民から収集したコンテンツが並べられて、ソファやダイニングの椅子に座りながら、それらを見る、という珍しい展示形式でした。
「わすれン!」のデジタルアーカイブに収録されたインタビュー映像、オーラルヒストリー、流された日用品、復元されたインテリア。食卓にさりげなく置かれた、3.11以後のとある家族を追った写真アルバム、日記、パネル。受話器から聞こえるおばあちゃんの声、etc…

そこにあったはずの暮らし、そこから新たに生まれた暮らし。
震災は間違いなく人々の暮らしのなかにあって、それはいまも決して終わってはいない。
風化、という言葉も吹き飛んでしまうほどのインパクトでした。
(このインパクトを写真でご紹介できないのが残念。。)

震災の記録を五感に訴える、アーカイブの新しいかたちであると思いました。

 
 #こちらのサイトに詳細レポートあり。

artscape.jp

 

 (後日談)迫ってくる現実があまりにもヘビーすぎて、見終わった後はしばらく気持ちが切り替えられないほどでした。震災資料はそれだけ人の心を揺さぶる思いがけない強い力を持っていて、それらを扱う責任の重さもあらためて感じました。

 3.「記憶を担保する」---ARABAKI ROCK FEST.公式サイトから

東北のひとに愛されている春の野外音楽フェスの代表格、ARABAKI ROCK FEST.(以下アラバキ

arabaki.com

2001年から始まり、2015年の観客動員数は約5万人。4月に開催され、東北に春の訪れを告げる恒例の大規模音楽イベントです。


このアラバキのオフィシャルサイト、第1回から直近開催分まで全てアーカイブされています。

arabaki.com


上記サイトのリンク一覧を見ると

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    2014年 ARABAKI ROCK FEST.14
    2013年 ARABAKI ROCK FEST.13
    2012年 ARABAKI ROCK FEST.12
    2011年 ARABAKI ROCK FEST.11 08
    2011年 ARABAKI ROCK FEST.11
    2010年 ARABAKI ROCK FEST.10
    2009年 ARABAKI ROCK FEST.09
    2008年 ARABAKI ROCK FEST.08
    2007年 ARABAKI ROCK FEST.07
    2006年 ARABAKI ROCK FEST.06
    2005年 ARABAKI ROCK FEST.04292005
    2004年 荒吐宵祭
    2003年 ARABAKI ROCK FEST.09072003
    2002年 ARABAKI ROCK CIRCUIT 2002
    2001年 ARABAKI ROCK FEST.2001
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2011年が2つのページに分かれています。
この年のアラバキは4月29日-30日に開催予定でしたが、震災の影響でいったん中止になり、8月に開催された経緯があります。その2回分を別ページで管理されているのですね。

 「ARABAKI ROCK FEST.11」のNEWSは3月10日で更新が止まり、
http://201101.arabaki.com/news/

6月6日には「ARABAKI ROCK FEST.11 08」にリニューアルされて、再始動&8月開催宣言がなされています。
http://201108.arabaki.com/news/

 

    2011年 ARABAKI ROCK FEST.11 08
    2011年 ARABAKI ROCK FEST.11

 

たったこれだけの情報ですが。

実際のところ、3月は通信手段やライフラインの確保が難しくなかなか身動きが取れなかったでしょうし、頻発する余震や原発事故など、先行きが全く見えなかったでしょう。夏フェスのスケジューリングも確定しつつある、そんな状況でも、参加者数万人規模のイベントを中止にせず、たった4ヶ月弱の準備期間で開催した主催者の方々の情熱を感じることができます。


こういう記録や軌跡を、当時のままに保存し、わかりやすく見せること。

上記のサイトを見た時に感じた空気感、行間から浮き彫りになる様々な人の動きや込められた想いを読み取ることができる、これもまさに、物理的なモノがなくても情報から「記憶」が立体的にアーカイブされていく、ひとつの例なのかな。と思います。