日々のきろく

図書館や高等教育をめぐる様々なできごとなどを記録します

明治大学和泉図書館見学レポート(前編)

前回のエントリ「2013年度大学教育学会課題研究集会に参加しました(その1)」の続きを書こうと思っていましたが、興奮冷めやらぬうちに図書館見学レポートを書くことにしました(順番がおかしいのですが前回の続編は後日必ず・・

というわけで。
12月13日(金)、東京出張の翌日に冬休みをぶつけて、ずーーーーっと行ってみたいと思っていた明治大学和泉図書館にお邪魔してきました!

明治大学和泉図書館の設計コンセプトは「入ってみたくなる図書館」。音のゾーニングと、フロアごとに変化する空間による「長時間滞在型図書館」が大きな特徴です。
2012年5月に開館し、図書館業界はもちろん、業界外でも話題となりました。
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「入ってみたくなる図書館」明治大学和泉キャンパス新図書館オープン(マイナビニュース 2012/04/27付)
●明治大、ラウンジ風の新図書館 和泉キャンパス(日本経済新聞 2012/05/7付)
●concept view 明治大学創立130周年記念和泉図書館 人と人、人と情報を結ぶ架け橋(日刊建設工業新聞 2012/08/24付)
●集い語る 大学図書館に(朝日新聞 2013/09/27)

 

概要

 

明治大学和泉図書館】*1

 ■開館年月日:2012年5月1日
 ■階数:地上4階(集密書庫中間階含め全7層)
 ■延床面積:8,856.92㎡
 ■閲覧座席数:総席数1,296席
       (1階:382席 / 2階:354席 / 3階367席 / 4階193席)
 ■配架可能図書数:600,000冊(うち集密書庫400,000冊)
 ■設計監理:株式会社松田平田設計

【(参考)明治大学*2
 ■キャンパス数:4(駿河台・和泉・生田・中野)
 ■学部・大学院構成:10学部15研究科
 ■学生数:学部:29,902名 大学院2,531名(和泉キャンパス学生数:約10,000名)
 ■キャンパス面積(和泉キャンパス):敷地面積71,216.83㎡ / 建物延床面積82,654.28㎡

 

開館時には徹夜組も出たようですね(笑
togetter - 明治大学和泉キャンパスに新図書館がOPENした。
 #認定証と記念品まであったのか!http://p.twipple.jp/o3uGA

キャンパスの象徴

和泉図書館がある和泉キャンパスには、法学部・商学部・政治経済学部・文学部・経営学部・情報コミュニケーション学部の1・2年生および大学院生、約10,000名の学生さんが学んでいます。
1・2年生がメインであるためか、キャンパス内は若々しく活気のある印象を受けました。

京王線明大前駅を出るとすぐに、立派な正門が見えてきます。その奥ににひときわ目を引く建物が。
ぱっと見図書館に見えないモダンな外観に、ここが和泉図書館であると認識するまで少し時間がかかりました。

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 正門入ってすぐの立地は理想的!キャンパスの象徴となっていました。

 

明るく開放的なエントランス(この透明ゲートいいなあ・・

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さっそく和泉図書館事務長の坂口雅樹さまにご挨拶。

facebookで情報交換させていただいておりましたが、お目に掛かるのは初めて。この日は職員育成から設計コンセプトまで、懇切丁寧にご説明・ご案内をいただきました。
坂口さんは既に170回を超える館内案内をこなされているとのことで、和泉図書館の注目度の高さが伺えます。

まず最初に、和泉図書館の概要と運用体制について坂口さんよりご説明いただきました。

お話の中で特に印象に残ったのは・・

 

■「入ってみたくなる図書館」「記憶に残る図書館」ー 利用者の個性に寄り添う場所づくり

和泉図書館の設計コンセプトは、先にも書いた通り「入ってみたくなる図書館」。実際に入ってみると、その居心地の良さに驚かされます。
利用者の個性に寄り添い、館内にバリエーション豊富な場所を用意することで、誰もがお気に入りの場所を館内に見つけ、長時間滞在することができる。また壁面を減らしガラスを多用することで外から図書館活動がよく見える。それに刺激された学生が「自分も入ってみよう!」と思ってくれる。そんな仕掛けのもとに作られた図書館は、まさに「入ってみたくなる図書館」を具現化していました。

坂口さんは、このコンセプトのほかにもうひとつ「記憶に残る図書館」を目指したい、とも。

入ってみたくなる→図書館が「自分の居場所」になる→学生生活のサイクルのどこかに必ず図書館がある→卒業しても利用できる

在学中から卒業後まで、時間の流れの中に図書館が自然に存在する、記憶に残る図書館。なんて素敵なのでしょうか。

実際に学生さんからは「自分の中で大学=図書館になりつつある」という感想があったとのことで、この新たなコンセプトも着々と実現しているのではないかと思いました。

 

■職員の育成 - 「職員が働きたくなる図書館」=「利用者が来たくなる図書館」

和泉図書館では閲覧サービスの一部を業務委託し、レファレンスサービス、サーチ・アシスト(学習支援デスク)におけるレポートの書き方指導、英語による学習相談は専任職員で運用。
「レファレンスは図書館業務のすべての基礎となる」という考えのもと、レファレンスの経験を重ねた図書館職員はアカデミックスキルを学ぶ4コースの正課授業を持つとのことで、和泉キャンパスでは半期15コマの授業のうち、12回を図書館職員が担当されているそうです。

ここで特筆すべきなのは、いわゆる「図書館実務」を担当する職員だけではなく、館内の庶務・会計系職員も授業を担当するという点です。
直接図書館の実務に関わっていなくても図書館運営の一翼を担っている、図書館構成員全員が利用者サービスを意識して仕事をすることは重要なことで、その意識を醸成するための取り組みとのこと。実際に授業を担当される予定の方は、実際に授業を聴講し、かつ自学自習を重ねられるのだそうです。
通常業務にプラスしての自学自習というのは相当に大変なことと思うのですが、それでもみなさん努力を重ねて授業を持つまでに成長され、図書館業務の面白さ・奥深さを知って通常業務への意識も変わっていくとのこと。庶務・会計系の方々のこうした試みは、国内の大学でも非常に画期的なことではないかと思います。

私も図書館で管理業務中心の仕事をしているので、ときどき自分が図書館のために、ユーザーのために何ができているのか見えなくなってしまいそうになるのですが、このような経験によって、見えなかった部分がうまく繋がっていくのだろうな、とお話を伺って感じました。私は他部署から来て司書資格も、専門と言えるものも持っていないことが長年コンプレックスだったのですが、それでもできることはたくさんあるのだと改めて気づかされました。

図書館は学内でも「大学教育・研究」のすぐ近くに位置する数少ない部門であって、図書館員は教育研究活動にコミットできる可能性を持っていると思います。サービス業務・管理業務問わず、図書館で働く人たちがそのことを常に意識するのは、とても大切なこと。

職員と利用者の満足はイコールであるはず、すなわち「職員が働きたくなる図書館」=「利用者が来たくなる図書館」である、という坂口さんの言葉が、とても印象に残りました。

 

■部門間連携

図書館内に常駐する学修支援担当の大学院生(TA)は図書館外の学習支援室の所属とのこと。学習支援室では様々なサポートプログラムを実施しているので、図書館での相談内容によっては学習支援室を紹介することもあるなど、先に紹介した図書館職員の授業と共に、学修支援が図書館に限らない全学的取組として、体系的に実施されている印象を持ちました。

 

お話を伺ってから実際に館内施設を見学させていただきましたが、そちらは次回のエントリでご紹介したいと思います。

*1:明治大学和泉図書館案内パンフレットより

*2:明治大学ホームページ「教育情報の公表」より http://www.meiji.ac.jp/koho/disclosure/ (参照:2013-12-15)