読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日々のきろく

図書館や高等教育をめぐる様々なできごとなどを記録します

2013年度大学教育学会課題研究集会に参加しました(その1)

前回のエントリがなんと2013年1月4日、忙しさを言い訳にしていたとはいえ、どんだけ更新していないのかと自分でもびっくりですが、ひさしぶりに。

2013年11月30日(土)-12月1日(日)、同志社大学今出川校地にて開催された2013年度大学教育学会課題研究集会に参加してきましたので、備忘録的に書きしるしておきます。

 

■学会入会のきっかけ

研究者でもない私が大学教育学会に入会したきっかけは、今年の6月1日(土)-2日(日)に東北大学で開催された第35回大会でした(統一テーマは「教育から学習への転換」)

詳細なプログラムはこちら⇒【pdf】大学教育学会ニュースレター No.93 , 2013.4

大学教育学会は、その研究領域を

専門教育、教養教育の区別を超え、大学教育の総体を、より人文的な人間主体の、自己改革を含む研究対象としてとらえ、「FD」、「学生の自己教育」等々、研究開発の可能性豊かな学問領域としての「大学教育研究」(大学教育学会ホームページ「わが国大学教育百年の視野」より(参照 2013-12-08))

としています。

自己改革を視野に入れているため、教員による「FD(ファカルティ・ディベロップメント)」*1のみならず、大学職員の「SD(スタッフ・ディベロップメント)」*2についても研究対象となっています。そのため、大会では職員による関連発表も数多くなされていました。

教員だけではなく、大学職員も研究発表をしている。現場の視点を持った研究成果に触れることができるかもしれない。これが学会入会を決めるポイントであったと思います。

第35回大会の統一テーマ「教育から学習への転換」にもあるとおり、学修支援にスポットが当てられたことが特徴です。特に「ラーニング・コモンズ」*3がテーマのラウンドテーブルでは(実はここで発表する予定だったのですが、業務上の事情により他の方に代わっていただいたのでした・・。)学生の主体的学びの実現、学修支援の在り方について活発な議論がなされました。このラウンドテーブルは、図書館関係者のみならず、教員・他部局の職員の方も多数参加され、ラーニング・コモンズがアクティブ・ラーニング*4を実現する装置として、全学的に注目されており、図書館外からも図書館職員に対する期待が高まっている、ということを強く実感しました。

 #ラウンドテーブル「ラーニング・コモンズ」の詳細については、当日参加された方がブログに詳しく記録してくださっています。
システム担当ライブラリアンの日記 (2013.6.1.)大学教育学会_1_ラウンドテーブル

vol.483:eラーニングかもしれないBlogラーニングコモンズをめぐる冒険(大学教育学会第35回大会参加記)

 

■2013年度大学教育学会課題研究集会

 前置きが長くなりました。

6月のテーマ「教育から学習への転換」に続き、今回の課題研究集会のテーマは「大学教育の質的転換の方向性を問う」。

興味深いテーマですが、もうひとつ魅力がありました。会場の同志社大学今出川校地の良心館には、今年4月に国内最大級のラーニング・コモンズがオープンしています。自学でも本格的な学修支援をスタートさせるにあたり(遅い)、ここはぜひ見学しておきたいスポットでもありました。

 #同志社大学ラーニング・コモンズについてはこちらのブログに詳しい見学記が。

ほんとも!〜学校図書館おたすけサイト〜 同志社大学ラーニング・コモンズ見学
【pdf】同志社大学ラーニング・コモンズ案内パンフレット / Learning Commons Guide

 

プログラムは2日間にわたって行われました。今日のエントリはまず1日目の分を(全てではありませんが)。

*内容は聴き取ることができた範囲で、私なりの解釈で書いています。

●第1日

1)プレ行事:「協同学習による政策提案ワークショップ」
   @ラーニング・コモンズ プレゼンテーションコート

2)基調講演:「アメリカにおける共通教育の方向性」
   ■Dr. Caryn McTighe Musil氏
   (AACU Senior Scholar and Director of Civic Learning and Democracy Initiatives)

    「Active learning for active citizenship」

3)開催校企画シンポジウム:「大学教育の質的転換の方向性を問う」
   ■河田 悌一 氏(日本私立学校振興・共済事業団理事長、中央教育審議会委員)
    「大学教育の質的転換に向けて:中教審答申と今後の課題」
   ■飯吉  透 氏(京都大学
    「アクティブ・ラーニングの是非を問う:主体的かつ効果的な学びの実現に向けて」
   ■山田 礼子 氏(同志社大学
    「アクティブ・ラーニングを通じての学生の学びとそれを支える環境」

 

 ■基調講演  - 活発な市民を生み出すためのアクティブ・ラーニング

プレ行事は参加できず、まずは基調講演から。

逐次通訳ではありましたが、普段からハエが止まりそうな速度でしか回らない頭なので、通訳をつけていただいても殆どついていけなかったというのが実際のところです(情けなし・・・

講師のMusil先生は「これからの大学教育における教育デザインやペタゴジーは、アクティブラーニングで育まれる能力やスキルに”グローバル市民としてのビジョン”を加えて設計すべきである」という内容のお話を、アメリカの大学における「地域と協同したアクティブ・ラーニングの展開」の実例を踏まえて示してくださいました。

アメリカは宗教・人種・収入の異なる多様なコミュニティや価値観があるはず。その中で大学が地域に入ってアクティブ・ラーニング、というのは果たしてうまく行くのだろうか、いや、だからこそ日本では比較にならないほどの幅広い視野や発想が身に着くのだろか。日本ではこのあたり、特に被災地で行われている地域協同プログラムで実現されつつあるのではないだろか、などとぼんやり考えながら聞いていました。

アクティブ・ラーニングが授業やラーニング・コモンズのような場で実現させるもの、という考えに拘りすぎていないだろうか、大学の中に限定されないアクティブ・ラーニングという視点は、学生の精神的な成長にとって実はとても大切なことなのかも知れません。

#以下のサイトに、地域と協同したアクティブ・ラーニングの事例が示されているようです

The Active Learning Active Citizenship project (シェフィールド・ハラム大学(イギリス))

 

■会場校企画シンポジウム - 大学教育の質的転換

1)河田 悌一 氏(日本私立学校振興・共済事業団理事長、中央教育審議会委員)
「大学教育の質的転換に向けて:中教審答申と今後の課題」

中教審の委員を務めていらっしゃる河田先生からは、答申で求められたもの、中教審の動向についてお話をいただきました。

まず最初に、近年の大学政策についての解説。普段から目にしてはいるものの、しっかり理解しているか自信がなかった各種答申のポイントについて、詳しいお話をいただけたのは非常に良かったです。

大学教育の質的転換や、能動的学修におけるアクティブ・ラーニングの有効性、学修支援環境の更なる整備が指摘された点で図書館関係者の注目を集めた「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」 (2013年8月)について、そのベースとなる各種答申の流れから説明をいただきました。

大学の機能別分化と高等教育の質保証が謳われた「我が国の高等教育の将来像(答申)」(2005年1月)、大学の3つのポリシー*5について言及された「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(2008年12月)、大学機能の再構築と大学のガバナンスの充実・強化の2本柱が示された「大学改革実行プラン」(2012年6月)

「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」はこの3つの大学改革を受けた答申であること、そしてこれらの大学改革を実行するための具体的指針が示されている、とのこと。

お話を伺って、これまでは単体の答申をひたすら読み込んでいたけれど、それだけでは背景にある「改革が必要な理由」は見えてこなくて、そこに連なる答申やまとめの文脈も含めて読む必要があるのかも、と感じました。

うまく纏められないのですが、大学はその役割を認識し社会からの要請(次代をリードする人材の育成・イノベーションの創出等々・・)を実現すること、そのためには、受動型学習から能動的学修への転換といった教育手法の改善のみならず、教学マネジメントを確立し、学内外と連携して組織的に成長していく必要がある。

今年5月に出された教育再生実行会議の【pdf】これからの大学教育等の在り方について(第三次提言)についても、ここまでの各種答申やまとめの内容が網羅されており、お恥ずかしい話ですが、今更ながら日本の高等教育政策が体系的に立案されていることを実感しました。

文科省の答申にがんじがらめになるがゆえに、「自学らしさ」「ならでは」が出せなくなることを懸念する意見も耳にしますし、私自身そう感じるところもありますが、少なくとも日本の高等教育が向かう方向をしっかりと見て理解しておくことは、大学で働く我々にとって必要不可欠なことではないかと感じました。

 

■余談その1

私立大学を対象に今年度からスタートした私立大学等改革総合支援事業文部科学省、日本私立学校振興・共済事業団共同実施)は、

■タイプ1「建学の精神を生かした大学教育の質向上」(大学教育質転換型)

 ・全学的な教学マネジメント体制の下、建学の精神を生かした教育の質向上のためのPDCAサイクルが実践されている大学を支援

 ・学生の学修時間の確保のための取組として、シラバスへの学修時間等の明記、学修時間の把握等の取組を重点的に評価

■タイプ2「特色を発揮し、地域の発展を重層的に支える大学づくり」(地域特色型)

・地元自治体、産業界等との連携の下、地域が求める人材の育成、地域貢献、生涯学習機能の強化など、特色を発揮し、全学的に地域の発展を重層的に支える大学を支援

・地元産業界等と連携した教育プログラム(正規の課程の他、社会人の学び直しのための履修証明プログラムを含む)の実施を重点的に評価

■タイプ3「産業界など多様な主体、国内外の大学等と連携した教育研究」(多様な連携型)

・全国的な産業種別団体、先端的な技術等を有する企業等や国内の大学等と連携した高度な教育・研究を行う大学、海外大学との連携等により、世界的に活躍できる人材の育成等に取り組む大学等を支援

 と、これまでのような、申請に対する部分的な評価ではなく、答申等で重視されていた点について総合的に評価、ポイント化し、一定ラインを満たした大学を支援対象校に選定した上で私立大学等教育研究活性化設備整備事業の補助を行うなど、地道に改革の努力を行っている大学を支援する施策に変化しています。

評価については様々な議論はあるかと思いますが、少なくとも我々大学職員が教学マネジメントを常に意識する必要があると思いますし、特に図書館職員は正課・正課外教育の改善にコミットできる、教員と職員の中間の場所にいるのではないかと感じています。

#この事業に付随する「私立大学等教育研究活性化設備整備事業」とアクティブ・ラーニングとの関係については、id:shibureさんのこちらのブログに完璧にまとめられています

私立大学等教育研究活性化設備整備事業の結果&追加募集とアクティブラーニングコモンズ(前編)

私立大学等教育研究活性化設備整備事業の結果&追加募集とアクティブラーニングコモンズ(後編)

#平成25年度私立大学等教育研究活性化設備整備事業採択校(案)の概要は こちら(文部科学省資料【pdf】)

 

■余談その2

図書館関係者の方にとっては興味深い資料がありましたのでご紹介(この一部が当日配布されました)
【pdf】教育再生実行会議「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」 (第四次提言)参考資料(2013年10月31日)

スライド13「学生の学修時間の日米比較及び各大学における学習環境整備の例」では小樽商科大学:アクティブラーニングのための教育環境整備、同志社大学:ラーニング・コモンズの整備、早稲田大学:ライティングセンターの整備が、スライド15では「アクティブ・ラーニングスペースの整備」「初年次教育の実施状況」が挙げられています(最新の状況に近い数値?

 以下、だいぶ長くなったので続きは次のエントリで・・・(次の更新はいつになるのだろう。。

*1:教授団の能力開発、教員開発。

*2:現在の日本の大学で、SD という略語は FD と対比して使われる場合にはふつう事務職員の能力向上(のための各種活動)を言う。(*1,2:  香川大学大学教育開発センター「FD(Faculty Development)用語の基礎知識」)http://www.kagawa-u.ac.jp/high-edu/data_fd.html(参照 2013-12-08)

*3:従来型の静かに行う学習から、活発にグループで討議するようなアクティブ・ラーニングまで、現代の大学生の多様な学習を支援するための施設・設備。(米澤誠. CA1804 - 研究文献レビュー:学びを誘発するラーニング・コモンズ. カレントアウェアネス. 2013, 317. http://current.ndl.go.jp/ca1804 )(参照 2013-12-08)

*4:教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。(中略)発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等によっても取り入れられる。(中央教育審議会大学分科会大学教育部会「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ(審議まとめ)」(2012.3)

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/04/02/1319185_1.pdf )(参照 2013-12-08)

*5:アドミッション・ポリシー(入学者受入の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針) *カッコ内の呼称は大学によって異なる